令和版のミスミソウと呼ばれる『十字架のろくにん』。
今回は一度打ち切られた後、連載再開されインターネットでも盛り上がりを見せる『十字架のろくにん』について語っていきたいと思います。
世界観、登場人物の解説やみどころポイントの解説考察をし、この記事を読んでいただいた方がこれから『十字架のろくにん』を読むときちょっとでも面白くなれば幸いです。
Contents
復讐3分クッキング『十字架のろくにん』あらすじ。主人公はダークヒーロー
『十字架のろくにん』あらすじ
小学六年生の主人公漆間俊は、同学年の5人組にいじめられていた。
耐えかねた主人公は両親に相談するもののいじめは収まることはなく、ついに両親と弟が手にかけれてしまう。
生き残った唯一の肉親であり、かつて日本軍の特殊舞台にいたおじいちゃんに鍛えられ、主人公は自分の手で復讐をすることを決意する。
「物語の構図は壮絶ないじめにあった主人公が、成長していじめっ子達に復讐する」という物語です。
『十字架のろくにん』の魅力はその物語のわかりやすさとグロ・ゴア表現だと思います。
冒頭でも語られますが、『いじめっ子5人は悪、亡くなった家族は善』というのがこの漫画の絶対のルールになっています。
いじめっ子5人は、主人公から命にかかわる拷問を復讐として受けますがまったくかわいそうに見えません。なぜなら、5人に同情できるところが全くと言っていいほどないからです。
人をいじめたり、虐げるのが好きでそれを悪びれることをしないクズしかいません。
下記にて説明しますが、5人それぞれに一応個性が用意されています。
“拷問が好き””暴力が好き”など、それぞれ個性があってそれに合わせて主人公が復讐を果たしていくというのが物語のすべてです。
一応、箸休としてヒロインが登場し恋愛コメディっぽいシーンやバトルシーン、デスノートのような頭脳戦っぽい雰囲気のシーンがあります。
ただ、それらのシーンは箸休めに過ぎず、この漫画にとっての見せ場は“拷問”だと思います。
それ以外のシーンに厚みはなく、だからこそグロ・ゴア漫画なのに軽い気持ちで読むことができるのです。
ホラー、サスペンス、復讐物とみせかけた、スプラッター漫画だと思います。
SNSやインターネットで読者の感想をみていると、「悪人達の過去がない」という感想を持った方が低評価をつけているのを見かけます。
確かに『十字架のろくにん』では『鬼滅の刃』のような深い過去やかわいそうな過去をもったキャラクターは登場しません。
主人公の復讐は家族をなくしてからの数年後の高校生になってから始まりますが、いじめっ子達の成長過程はカットされています。カットされているというか成長がありません。
どういう意味かというと“悪い奴は悪い奴”のままなのです。
いじめっ子5人のなかで改心している人間は一人もおらず、全員悪い奴のまま高校生になっていて、“小学生レベルの悪”から“高校生レベルの悪”にレベルアップしているだけです。
5人達の数年間にはなんの変化もなく、ただ悪が熟成されただけです。普通中学、高校と進んでいけば、人間環境や環境の変化で多少は人格や信条の変化があります。
しかし、いじめっ子5人には変化はまったくありません。
まる3分クッキングお決まりのセリフ「一日寝かせたものがこちら」ならぬ「4年寝かせた悪がこちら」といった感じです。
気持ちよく復讐を楽しめる漫画です。
善と悪しか登場しない。『十字架のろくにん』主要登場人物紹介。
漆間俊。主人公はダークヒーロー?
小学6年生の時いじめられ、家族も事故にみせかけて殺されてしまいます。
現在高校生になり、いじめっ子グループ5人に復讐を誓う。敵に対して非常になれる心や、拷問の術はおじいちゃんに鍛えられた。
読み始めた時は、筆者はこの漫画を薄っぺらいと思っていました。
漆間の家族が事故を誘発されたシーンも、ブレーキ痕や髪の毛を鑑識が調べれば明らかに事故ではないことはわかります。
しかし、主人公はダークヒーローなんだと気づいてからは納得がいきました。
漆間は復讐を自分のものにしたいと語りました。
いじめを法にさばいてもらうでもなく、「いじめをしたやつをもっと強い力でいじめたい。」というのが漆間の考え方です。
本作のタイトル『十字架のろくにん』はいじめられっ子5人に加えてもう一つ十字架が用意されています。
そう、ちゃんと主人公の分の十字架が用意されているのです。主人公がやっていることは善ではなく悪です。更生できたかもしれない未成年の罪を自らの手で裁く主人公のやっていることは『私刑』です。
主人公が冒頭で、登場するキャラクターを善と悪でわけます。
その時いじめっ子5人はもちろん悪ですが、善の中に主人公とおじいちゃんは入っていません。主人公自身自分がやっていることを私刑であり“悪”だとわかっています。
最初は主人公も敵役も中二病っぽくてみてらんないと思っていましたが、ダークヒーローの復讐物風スプラッタ漫画なのだとわかると急に面白く見えてきました。
おじいちゃん
本名不明。戦時中、『呉鎮守府第百特別陸戦隊、通称、北山部隊』という秘密部隊に所属していた。
主人公の復讐をしたいという心からの願いに答え、高校進学までに冷酷な戦士に鍛え上げる。
主人公の復讐に加担してくれますが、倫理観は戦時中にくるってしまったようです。
本来、法で裁かなければならないものを、私刑によって裁こうとする主人公に加担するおじいちゃんは善ではなく悪です。
主人公やおじいちゃんは自分達を正義のヒーローかなんかだと思っているように見える描写が多々あり、そこで冷めてしまう読者もいるようです。
しかし、よーく読んでみると二人は自分たちのことをいじめっ子達と同じ悪だとちゃんと思っていることがわかります。
おじいちゃんにとっての実の子供が殺されてしまったり、孫が重症を負わされていてもあまり動揺しなかったにもかかわらず、主人公に対してはかなり気を使っているように感じます。
戦争が自分を狂わせ、子供から邪険にあつかわれていて、それでも細々と暮らしていたものの、本当は誰かに理解して労ってほしかったのではないかと思います。
だからこそ、唯一自分の理解者になってくれた主人公を愛していて、自分と同じ人を殺める罪を背負わせたことに罪悪感を感じていたのではないかと思います。
本来、復讐を止めるべき大人であるのにそれを甘やかして助けてしまった。それがおじいちゃんにとっての十字架なのかもしれません。
最新話ではそんなおじいちゃんの罪滅ぼしのようなシーがあり、ほろりと来てしまう方もいるかもしれません。
いじめっ子5人の中のリーダー、至極京
いじめっ子5人の中のリーダー。中性的な容姿をした美少年。漆間に対して実験と称したいじめを続け、漆間の家族を奪った張本人。この世で最も“凄いこと”は殺人だと豪語し、漆間が自殺するよう仕向ける。
謎のカリスマを持ち、もし至極京以外のいじめっ子にかわいそうなところがあるとするなら彼と出会ってしまったことでしょう。家柄はよく成績優秀で運動神経も抜群、日々の退屈から刺激欲しさに“いじめ”をするとんだサイコパスです。
セリフや行動になんの凄みもなければ共感できることもありませんが、不思議なカリスマがあり、最新話では怪しげな新興宗教を立ち上げており、漆間をさらなる刺客が襲います。
千光寺克美。エアガンが好きすぎて…。
いじめっ子グループの最弱。漆間の最初のターゲット。エアガンが大好きで虫や小動物を殺したり、漆間をいじめて楽しんでいた。漆間を至極に引き合わせた張本人であり、見方によっては漆間家の不幸を招いた元凶。
漆間にとって最初の復讐のためか、かなりきつめの拷問がおこなわれました。ここでこの漫画のテンションについていけるかどうか、読者のわかれめになります。漆間も復讐拷問のためにエアガンを使ったり、とある調理器具を使ったりとなんだか楽しんでいるようにも見えます。
右代悠牙。小学生から女たらし
いじめっ子グループのイケメン枠。小学生の頃から周りからヤリ〇ンと呼ばれる自他ともに認めるイケメンっぷり。その容姿につられてきた女性を風俗に斡旋したり麻薬売買を行う外道。
女性のことを道具としか考えていない屑かと思いきや、至極以外の人間全てを道具だと思っていた屑という徹底した屑っぷりに思わず笑ってしまいそうになります。
円比呂。読者からの嫌われもの。
至極に信仰心のようなものを感じており、いじめや非道な行いも全て正当化する教信者。「ケヒャッ」という笑い声が口癖。
至極からはまるで道具のように扱われていており、漆間家の事故を装うために、崖から落とされても至極の事を信じ続ける狂信者という言葉が一番似合うキャラクターです。
子供にガンを飛ばしたり、腹の虫を収めるために見ず知らずの中学生をいたぶったりと、まるで『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するアレッシーのような小悪党です。
とにかく小物っぽさが目立ちますが、作中でとんでもない事をしでかすため、漆間からも読者からも一番嫌われているキャラクターかもしれません。
円比呂編も、かなり読む人を選ぶので、グロ・ゴアが大丈夫だったという方でも注意が必要です。
久我大地。握力180キロの化け物
いじめっ子5人の中で一番体格に恵まれた男。柔道の大会を総なめにし、高校には特待生として入学。漆間をいじめる時も暴力のみ。
常人離れした力と、握力が180kgあるという化け物で、至極を除いたいじめっ子組の中で漆間が1番苦戦していたキャラクターだと思います。
久我を心から屈服させるために漆間は、柔道で戦うことに挑みますが、そのシーンはなかなか胸熱の展開です。たしかに卑怯な手で復讐したら、死際に言い訳してくるかもしれないので、読者の胸を一番スカッさせてくれる展開だったのではないでしょうか。
その後の拷問シーンも”シャコ“を使ったものでした。「シャコのパンチ力を拷問に使うのかな?」と思いきやまさかのシャしたとある習性を利用した拷問で、ここまで『十字架のろくにん』を楽しめてきた方は必見の面白いシーンだと思います。
『十字架のろくにん』各巻ネタバレみどころポイント。
ここからは各巻の見所となるシーンをネタバレありで語っていきます。ネタバレありとなっているのでまだ未読の方は注意してください。
1巻の見どころ
1巻のみどころのポイントはおじいちゃんと漆間俊の会話です。
「改心した者は見逃せ。人には生まれ変わるチャンスが必要」と語るおじいちゃんに対して、俊はそれを了承するものの、「僕は奴らが変わってないことを祈るよ。」という決して揺るがない復讐に対する決意を感じます。
この作品は爽快な復讐劇ではなく、ドロドロとした復讐と背徳の物語であるということを感じさせてくれるシーンです。
2巻の見どころ
2巻のみどころポイントは俊が復讐を悩むシーンです。
復讐の最初のターゲットである千光寺は意外なことに、改心しているようでした。漆間に対していじめをしたことを謝り、また友達になりたいと語ります。
結局その謝罪は嘘だったわけですが、俊はこの謝罪がちょっと嬉しそうでもありました。
まだ復讐をはじめていない俊はまだ被害者のままで、連続殺人の犯罪者でもなければ、心を失った怪物でもありません。
1巻では、復讐を望んでいたものの、この時点ではまだ俊は人の心を持っていて、復讐をしなくてもすみそうなことをちょっと喜んでいるようにもみえました。
千光寺の謝罪が嘘だったことから、この漫画はスプラッタへと舵を切ってしまいますが、人間の心がそう簡単に消えないとわかる名シーンだと思います。
3巻の見どころ
漆間の次の標的はイケメンの右代悠牙。その容姿につられて寄ってきた女性を、売春の道具にし、麻薬の売買までやっている屑が登場し、もう漆間も迷うことはないかと思いきや、また迷います。
悠牙は過去に1度、本命の彼女が出来てから更生したものの、彼女が行方不明になってしまったことでまた闇に堕ちてしまったことを漆間は知ります。
そこで漆間は本当は良い奴なのか?とまた復讐を迷ってしまいます。
この時点で漆間の心はまだ理性や良心が残っているようですが、結局悠牙の改心した話も嘘だったので、これを機に漆間の人間性はどんどんなくなっていきます。
救いようのない敵役はどうでもいいとして、なんだかんだ良心の呵責や理性がある漆間が、復讐のために化け物になっていってしまうのは辛いですがみどころでもあります。
また、3巻はラブコメ、ギャグ、お色気、バトルと色んな要素があっていい箸休めになります。
4巻の見どころ
俊の次の標的は円比呂。この巻のみどころは、特にないと言っては過言になるかもしれませんが、他の巻と比べて落ち着いて読むことができます。
というのも、4巻で主に敵になる円比呂はいじめっ子グループ内でも一番の雑魚キャラ臭がします。俊が2人も復讐を遂げたことで、円比呂は恐怖を感じていましたが、至極や久我は俊が復習を始めたことにむしろ喜びを感じていました。
円比呂の行動も俊に読まれることが多く、復讐や拷問シーンは安心して読んでいられます。
しかし、4巻には〇姦のシーンがあります。それも物語の第2のヒロイン的なポジションのキャラクターが〇姦される為、グロ・ゴアに耐性があってもこの胸糞展開がダメで読むのを辞めてしまった方は多いようです。
5巻の見どころ
5巻のみどころは久我と漆間の柔道対決だと思います。
普通パワーキャラと言えば一番に主人公のカモにされる立ち位置ですが、久我が倒されるのは物語のかなり終盤です。
それも、主人公の特殊な能力や技で倒すのではなく真っ向から柔道で倒そうとするというのも面白いです。
5巻はこの久我と俊の柔道対決以外にも、色々なキャラクター達の思惑が交差するのもみどころで、情報量が一番多い巻になっていると思います。
6巻の見どころ
みどころポイントは俊が自らの十字架を意識するシーンです。
久我をなんとか倒すことができますが、俊は自分の不注意によって善人を事件に巻き込んでしまいます。さらに、俊は自分の復讐を邪魔しようとする刑事まで手にかけてしまい、俊の十字架はどんどん大きくなっていきます。
決して許されない罪を背負ってしまった俊は、2巻や3巻にあった可愛げが完全になくなり、もはや復讐を言い訳にする化け物になってしまいました。
それでもまだ至極という最大の宿敵が残っている彼が、どういう最期を迎えるのか気になります。
7巻の見どころ
7巻のみどころは弟が目覚めるシーンだと思います。
やっと目覚めた弟に俊は感動の再会をはたします。しかし、弟は痛覚を失っており感情も不安定になっている様子。
さらに至極がついに動き始め、これまで俊が犯してきた罪や目を向けてこなかったことが俊を苦しめます。
至極に勝てるビジョンが全く見えないのも面白く、それだけ物語のカタストロフィが大きくなると思うと、最終回が待ちきれなくなります。
『十字架のろくにん』読者の評判や感想。ミスミソウと比べると…。
SNSやインターネットのレビューサイトを覗いてみると、「手放しで面白い」という方が30パーセントくらい、「面白いけど人を選ぶと思う、または胸糞展開に耐えられず自分は泣く泣く離脱した」という方が40パーセント、「内容が薄くてつまらない」という方が30パーセントくらいいる印象です。
たしかに、『十字架のろくにん』は人を選ぶシーンが多いです。その上、主人公の修行するシーンがなかったり、不自然に主人公に惚れやすいヒロインが出てきたりします。
ラブコメ、ギャグ、頭脳戦、ホラー、サスペンス、色んな要素が混ざってしまい、作品固有の味がよくわからなくなってしまっている部分もあります。
筆者個人としては、復讐物ということで『ミスミソウ』と比較されていますが、個人的にはジャンル違いだと思っています。
上記でも描きましたが、『十字架のろくにん』はスプラッタ映画に近く、悪VS悪、『バットマン』ではなく『13日目の金曜日』に近いです。
マナーの悪いムカつくリア充集団をジェイソンという絶対悪が襲うという映画の構造に似ており、取ってつけたような恋愛要素や主人公の葛藤の様子はあくまで箸休めにしかすぎません。
正直筆者としてはゴア表現の作品やホラー、それこそ復讐物の作品を多く読んでいるので、物足りなさも感じてしまいました。
しかし、単純にスプラッタ要素だけを楽したいという方や、グロ・ゴア表現がある作品に挑戦したいという方にはお勧めできる作品だと思います。